検索エンジンという、技術領域でやってきた身として、クーガーが作っているプロダクトは非常に面白いと感じていますーそう語るのは、バックエンド系チームのエンジニアリングマネージャーを務める大須賀 稔さん。なぜ、大手IT企業からクーガーへとジョインしたのか。そこにどんな魅力があると感じ、現在どのようなチャレンジを進めているのか伺いました。(インタビュー実施日:2024年12月2日)
プロフィール
大須賀 稔 / Minoru Osuka エンジニアリングマネージャー 兼 テックリード / プラットフォームエンジニアリング
楽天、ヤフー、メルカリ等大手IT企業にてテックリードとして大規模検索プラットフォーム開発に従事した後、2024年4月にクーガーへジョイン。現在は、バックエンド/DevOpsチームを中心に、開発者の組織づくりを推進している。また個人では、Apacheソフトウェア財団のコミッター兼プロジェクト管理委員会メンバーとしても活動。自身でもOSSの形態素解析器の開発を続け、海外スタートアップの開発する全文検索エンジンやリレーショナルデータベース、ベクトルデータベースにも採用されている。
AIの登場で、検索技術も大きく変わり始めている
クーガーに入社する前のご経歴を教えてください。
私は20年以上にわたって検索エンジンの開発に携わってきました。社会人になったばかりの頃は、専門学校でプログラミングの講師を務めていましたが、実務経験のない状態で学生を指導することに違和感を覚えました。そこで、「まずはエンジニアとしてのキャリアを積もう」と考え、受託開発を行うシステム会社へ転職しました。
その会社では、Windowsのネイティブアプリケーションを、大手ゲーム会社や地上波放送局向けの業務システムを開発していました。同じころ、2000年代に入るとインターネットが急速に普及し、ポータルサイトや検索エンジンを日常的に利用するようになります。私は「検索エンジンの開発に関わりたい」と強く思うようになり、当時ユーザーとして頻繁に使っていたInfoseekへ入社を果たしました。
入社後は、今でいうSNSに相当するサービスの開発チームに所属していましたが、検索エンジニアとして働きたいという意志を伝え、異動の機会を得ます。そうして本格的に検索の分野に飛び込み、そこから楽天、ヤフー、メルカリなどの企業で検索エンジンの開発に携わり続けてきたのです。
国内大手IT企業でキャリアを積んだ中で、なぜ、クーガーに入社されようと思ったのでしょうか?
最初のきっかけは「人」でした。クーガーのCAIO(Chief AI Officer)である平賀とは、私がInfoseekで働いていた頃からの友人で、転職を重ねるなかでも何度か一緒に仕事をしたことがあります。彼が一足先にクーガーへジョインして、「ここは面白い会社だから、一度来てみないか」と声をかけてくれたのです。また、代表の石井やCTOの高橋とも楽天時代に共に働いた経験があり、その人柄をよく知っているからこそ、「この会社なら自分にとって居心地がいいのではないか」と直感的に思えました。さらに、自分の知見や経験を必要としてくれる組織であることを感じられた点も、大きな後押しになりました。
実際に話を聞いてみると、プロダクト自体も非常に魅力的でした。検索エンジンの延長線上にAIの活用があるという取り組みは、以前から自分がやりたかったことの一つです。しかし、前職ではその機会を得られずにいました。そんなタイミングでクーガーから声がかかったことで、「ここでなら自分が本当にやりたいことに挑戦できる」と確信し、2023年末にジョインを決めました。
ちょうど世の中で、ChatGPT旋風が起きていたタイミングですね。
ちょうど生成AIの登場により、検索という概念そのものが大きく変化しようとしている時期でした。すぐさまRAG(Retrieval Augmented Generation)をはじめとする、さまざまな手法も提案されるようになり、業界全体が混沌とした面白い状況に陥っていたわけです。そんな新たな挑戦や可能性が渦巻くタイミングだからこそ、思い切って飛び込みたいと考えました。
バーチャルヒューマンエージェントというと、検索エンジンとは一見無縁の分野に映るかもしれません。しかし、インターフェースが異なるだけであって、本質的には私がこれまで培ってきた検索分野での知見を、存分に活かせるフィールドだと確信しています。そうした考えから、私はこの新たな領域への参加を決断しました。
開発者が最大限に能力を発揮できる組織に向けて
クーガーでの業務内容を教えてください。
バックエンドチームのエンジニアリングマネージャーとして、開発者一人ひとりが持つ能力を最大限に引き出せるような組織づくりに注力しています。また、テックリードとしての立場から、技術的な方向性やアーキテクチャの設計を定めるなど、チームが向かうべき道筋を示しています。手が足りない場面では、自らコードを書くこともあり、マネジメントから実装まで手広く関わることで、全体の品質や効率を高めることに貢献しようとしています。
開発者が最大限に能力を発揮できる組織づくりとは、具体的にどんなことをされているのでしょうか?
入社した当初は、各メンバーがそれぞれ独立してタスクを回し、組織的な動きがほとんどできていない状態でした。CTO自身もコードを書く必要があるほど手が足りず、本来であればCTOとしての役割に集中すべき人材が、育成や指導に時間を割けないでいたのです。その結果、チーム全体としての生産性も高いといえるものではなく、マネージャー不在に近い状況が生まれていました。
そこで、まず組織体制の見直しから着手しています。私がタスクアサインメントを管理し、コードのオーナーシップが曖昧になっている箇所を整理することで、誰が何を担当するのかを明確化しました。また、CTOが本来手を動かさなくてもよい業務を他のメンバーに移管し、CTOが本来担うべき技術戦略的な意思決定に注力できる環境づくりを進めています。
私の役割は、いわゆるテクノロジーマネジメントとピープルマネジメントが中心です。技術的な方向性を示すだけでなく、チーム内の役割分担や育成、コミュニケーションの改善など、人や組織を動かす部分に注力しています。こうした取り組みで、チーム全体がスムーズに動き出し、持続的な成長と高い生産性を追求できると考えています。
ファミリーマート約7,000店舗に人型AIアシスタント「レイチェル」が導入されるなど、事業が拡大する中で、エンジニアチームの整備は喫緊の課題ですね。どんなエンジニアと一緒に働きたいですか?
まずはカルチャーフィットが何より重要だと考えています。今はまだ小さな組織のため、個人の裁量が大きいです。自ら積極的に「これをやりたい、やるべき」という意欲を示し、仕事を拾いにいける方が活躍しています。逆に、指示が来るのを待っているタイプの人だと、希望するタスクをなかなか任せてもらえず、アウトプットも残せない可能性があります。
技術分野への強い探求心も欠かせません。私たちが手がけるAI関連の領域は目まぐるしく変化していますから、常にアンテナを張りめぐらせ、最新動向をキャッチアップする習慣がある人でないと、このスピード感についていくのは難しいでしょう。そんな好奇心旺盛で主体性のある方と一緒に働きたいです。
AIに詳しくなくても大丈夫でしょうか?
AI関連の技術を扱うとはいえ、最初からリサーチャー級の専門知識を備えている必要はありません。クーガーにはAIリサーチャーのチームが存在しており、彼らとの連携を通じて最新情報を追いかけていくことが可能です。むしろ重視しているのは、フロントエンドやバックエンドのしっかりとした開発経験と技術力、チームメンバーとの円滑なコミュニケーション能力です。
また、当社のプロダクトは主にAWS上で展開しているため、サーバーレスアーキテクチャなどのクラウド技術に深い理解を持った方を歓迎しています。自分の得意分野を活かしながら、最新のAI技術を取り入れた社会的価値の高いプロダクトづくりに挑戦してみたいという方は、非常にフィットすると思います。
実際に多くの現場で使われているプロダクトを扱うことの魅力
マネージャーとしてではなく、一人のエンジニアとして感じるプロダクトの魅力を教えてください。
何よりの魅力は、実際にお客様が日常的に使っている製品を手がけていることに尽きます。IT関連の展示会には数多くのAIプロダクトが並びますが、その多くはまだ試験段階で、実利用にまで至っていないケースも少なくありません。その点、クーガーのプラットフォームは既に製品として出荷され、実際の現場で役立っています。日々お客様から寄せられるさまざまなフィードバックが、私たち開発チームに刺激を与え、次なる改善やアイデアの源泉となっています。こうした実践的なサイクルがまわっていることが、現場に立つエンジニアとして本当にエキサイティングだと感じています。
ご自身として、今後チャレンジしていきたいことは何ですか?
検索エンジンはもともと、不特定多数のユーザーが同じキーワードで検索した際に、多くの人にとって有益な結果を返すことが主な目標でした。しかし、レイチェルのような人格を備えたインターフェースでユーザーと対話的なコミュニケーションが可能になれば、より個々人に適した回答を提供する必要性が増していきます。そうした個別最適化を求められる新しい状況に対して、これまで検索エンジン分野で培ってきた知見を活かしながら、どこまで突き詰められるのかを追求していきたいと考えています。
検索エンジン開発の面白さは、どんなところにあるとお考えですか?
検索エンジンの領域は、実に幅広い技術を網羅しています。メモリやディスクIOの扱い、アルゴリズム設計、さらにはマルチスレッディングやマルチプロセッシングといった並行・並列処理まで、開発者として踏み込まなければならない領域が多彩に存在しているのです。これらの多面的な挑戦は、まるで「ソフトウェア開発の総合格闘技」とも言えるもので、私自身、その表現は本当に的を射ていると感じます。また、より低レイヤーに近づいていくと、また違った面白さが見えてくるため、携わっていて飽きる暇がありません。まさに、探究心を持ったエンジニアにとっては無尽蔵に興味深いフィールドだと考えています。
エンジニアとして大切にされていることを教えてください。
常に新しい技術やトレンドにアンテナを張り続けることです。エンジニアリングマネージャーというマネジメントの立場であっても、実務レベルで手を動かし続けることで、知識やスキルが鮮度を保ち、常にプロダクトに貢献できる状態を維持しています。
また、得た知識を単なる暗記で終わらせず、ブログで発信したりプログラムとして形にしたりすることで、自分の中にしっかり落とし込むことも大切にしています。知識を外に向けてアウトプットするという行為は、理解を深め、整理し、他者との共有やフィードバックを受けるきっかけにもなります。
さらに、技術コミュニティへの参加やその運営、オーガナイザーとしての関わりによって、多くのエンジニアと知見を交わし合い、刺激を受けながら自己研鑽を重ねることも大切にしてきました。こうしたコミュニティ活動を通じて得られるネットワークやOSSとの関わりは、新たな技術への扉を開き、自分の成長を後押しする重要な要素だと感じています。
エンジニアの好奇心を育てつつ、会社にとって最小のリスクでコントロールもする
志向としては、マネージャーよりプレイヤーでありたいと考えられている印象です。なぜエンジニアリングマネージャーになったのでしょうか?
プレイヤーとしてエンジニアリングに直接関わり続けたい気持ちはあるものの、それと同時に後進を育てる責任も感じているところです。私自身、プライベートではOSSへの貢献を続けているため、ソフトウェアエンジニアとしての「現場感覚」やスキルはそこで磨き続けることができます。一方で、チームビルディングや人材育成は一人で完結できるものではありません。だからこそ、組織の中でエンジニアリングマネージャーという立場を選び、チームづくりや若手の成長を後押しする役割を担うことに意義を感じています。
クーガーの好きなところを教えてください。
自ら「やりたい」と手を挙げれば、その仕事を任せてもらえる文化が根付いていることです。会社の規模が小さいからこそ、「この分野を担当したい」と名乗りを上げた人がいれば自然とその人に任せる流れになります。もちろん、受ける側には相応の責任も生まれますが、その分、強いモチベーションを持って業務に取り組めますし、実際に新しいアイデアや改善点が次々に生まれています。
こうした個々の意思を尊重し、挑戦を歓迎する風土は、組織全体にポジティブな影響をもたらし、自然と成長機会を増やすことにつながります。その結果、生産性やアウトプットの質も高まっていくのです。自分の意欲を存分に発揮できる環境があるというところがクーガーの好きなところです。
個人の裁量に寄りすぎるとリスクが高いとも感じますが、実際はどうなのでしょうか?
エンジニアリングマネージャーとして最も重要だと感じていることは、エンジニアたちのアイデアや意欲をうまく汲み取り、実際の開発プロセスに活かしていくことです。組織内には、いろいろな領域に興味を持つエンジニアがいて、彼らが「やってみたい」と思うことには、常に一定の可能性が潜んでいます。しかし、自由に任せ過ぎるとリスクが膨らんでしまうのも事実です。そこで、私はエンジニアたちから吸い上げたアイデアをもとに、「まずはここまで試してみよう」という明確なロードマップを提示することで、リスクを最小限に抑えながらも新しい挑戦に踏み出せる環境づくりに力を入れたいと思っています。
こうしたプロセスを通してエンジニアは着実に技術力と好奇心を育み、試行錯誤を経る中で成果物のクオリティも上がっていきます。同時に、企業側としては小さなステップでコントロールを効かせつつ、新規領域への進出や改善施策の実行が可能になります。エンジニアの成長と企業の戦略的発展、この双方をバランスよく推し進めることが、私がエンジニアリングマネージャーとして直近のミッションだと強く感じているところです。
最後に、クーガーへの入社を検討しているエンジニアの方々にメッセージをお願いします。
私たちが取り組んでいるのは、一見するとコンシューマー向けサービスのような華やかな表舞台ではないかもしれません。しかし、世の中の基盤を支えるプラットフォームを築き上げるという、社会的に意義深いチャレンジです。その成果の一つとして、ファミリーマート様への導入実績を挙げることができます。
さらに、これから私たちは事業領域を拡大し、より幅広い分野でこの基盤的技術を活用し、社会に貢献していく計画です。最新技術を積極的に取り入れながら、安定的で強固なプラットフォームを育て上げることに興味と情熱を持つ方がいれば、ぜひ加わっていただきたいと思っています。私たちと一緒に、技術を通じて社会を下支えする未来づくりに参加してみたい方、ぜひご応募をお待ちしております!